スケッチブックを持って「街道を行く」   その10 江差


江差海岸で座礁した開陽丸

江戸幕府がオランダに建造させた軍艦開陽丸。戊辰戦争の最中、江差沖で座礁し、沈没した。開陽丸には新撰組土方歳三等も乗船していた。開陽丸は江差沖の何処に沈んだか長く謎だった。しかし今やその海底遺跡は発掘され、開陽丸も復元され江差の沖に浮かんでいる。見学した当日台風23号接近中で海は荒れ、復元された開陽丸も大きく揺れていた。

(追記)帰郷後古本屋で『柏倉清著、教育書籍発行、軍艦開陽丸ー江差への航跡ー』を発見。幕末日本を揺るがしたあの動乱を開陽丸を中心に、実に劇的にまとめたドキュメント。あらためて北海道江差への旅は、歴史との深い関わりであったことを再認識。

江差鯡(にしん)問屋を勤めた横山家

江戸時代 北前船を操った江差の廻船問屋 横山家8代目ご主人は横山家案内の途上で「今のトヨタがあるのも江差のお陰です」と言い出した。すかさず「えっ どうして」と聞き返した。

「江差は江戸時代鯡(にしん)かすを北前船で三河に運びました。三河では鯡かすのお陰で三河木綿が栄えました。三河木綿の産地で豊田佐吉は豊田自動織機を創りました。豊田自動織機のお陰で今日のトヨタが出来たのです。だから江差がトヨタを創ったのです」と応えた。

寒風で波荒れる江差海岸

江差は海からものすごい強風が吹き寄せる。このすごい強風なら開陽丸が座礁するのも無理もない。それにしてもこの町は寒風はすごい。この町では最上格と言われる某ホテルに宿泊した。

このホテルのロビーに”しんぶん赤旗”が置いてあった。支配人に聞けば「この町は共産党が昔から強い町です。このホテルも昔から”しんぶん赤旗”をロビーに置いています。この町の先生方は党活動にも熱心ですよ」とのこと。今度またこの町に来ることがあれば、是非このホテルに泊まりたいと思った。

中山峠の紅葉は今が最高

函館から江差へはJR江差線ワンマンカーでやって来た。「帰途は是非バスにしなさい。今や中山峠は紅葉が最高ですよ」と教えられた。進言に従って帰りはバスに乗って、中山峠で途中下車した。

途中下車した中山峠には当然ながらお客など一人も居ないし建物も一軒もない。熊が出そうな紅葉の中で独り黙々とスケッチした。振り向くと、「ここ中山峠に一軒の旅籠あり」という郷土歴史研究会の記念碑が立っていた。こんな辺鄙な山奥にも旅籠が一軒あった。想像するだけで胸が高鳴った。

池大雅が描いた天井画、八方にらみの龍

江差海岸に面した高台に江戸時代に建てられた法華寺がある。この寺に江戸時代の文人画家池大雅が描いた天井画がある。


この八方にらみの龍と称す天井画は、部屋の何処から眺めてもきびしい眼光で龍がにらみつける。抽象画的技法で不思議な魔力を天井画とした池大雅の芸術力に感動した。


  荒れる江差海岸 白波打ち寄せる江差かもめ島海岸 今が最高 中山峠の紅葉


ここをクリックして頂くと 表紙に戻れます