司馬遼太郎は、「街道をゆく」の中でこう書いています。奈良にはいずこにも豊かな歴史がある。私はこの境域のどの一角も大好きである。とくに一ヶ所をあげよと言われれば、二月堂のあたりほどいい界隈はない。立ち止まって眺めるというよりは、そこを通り過ぎて行くときの気分が素晴らしい。
奈良公園には豊かな自然があります。大仏殿、興福寺、二月堂、三月堂、春日大社等々。日本国中でこれほど保存のいい境内は、どこにも無いでしょう。奈良散歩は僕の青春時代からのあこがれの時間でした。高校時代の親友故伊東大作君は奈良国立文化財研究所に勤めていたことも僕の奈良びいきの大きな原因のひとつです。
奈良公園の中に皆さんがご存知ない穴場があります。奈良県庁屋上から奈良を眺望すること。先日もここでスケッチを楽しみました。ここは あたかも、北京飯店から北京紫禁城を鳥瞰する気分です。
奈良東大寺は、東大寺大仏殿にふさわしい素晴らしい門を持って
います。奈良東大寺南大門。鹿と戯れながらふと見上げると運慶・
快慶が作り上げた仁王像が目の前に立つ。感動です。
奈良には沢山の観光客がみえます。かって、ゾルゲと尾崎が出会ったのも奈良公園でした。歴史的大瞬間でしたね。外国人といえば中国人は観ていると写真を撮るときのポーズにすごくこだわりますね。でも皆さん、良くないマナーの方は見かけません。
奈良唐招提寺の門をくぐると。大きな屋根と太い柱、天平建築の
金堂が目に飛び込んできます。和辻哲郎も堀辰雄もこのエンタシスの柱と鑑真和上のすごい来日ヒストリーに涙しています。僕もいつも胸が熱くなってきます。
唐招提寺と薬師寺をつなぐ歴史の小路を独りで歩いていつも思い出します。思えばまだ子ども達が小さかった頃、この小路を妻も含めて家族4人で何度も歩いたことを。平和な4人の小市民生活だった。
法隆寺は奈良公園から余りにも離れている。しかも法隆寺へ行くバスは1時間に1本しかない。、法隆寺は、境内での撮影スケッチは一切禁止。こっそり描いていると警備員が近づいてきて忠告する。ヨーロッパの博物館は何処でも館内撮影、スケッチ自由なのに、何故日本だけがこんなにもうるさいのか。
勿論、奈良は仏寺のみならず、仏像こそが素晴らしいのです。飛鳥の仏像の美しさは奈良興福寺にあるとも表現出来ます。勿論奈良東大寺ミュージアムの美しさも感動的ですが。
昨年興福寺阿修羅像を描いた。何故か最近仏像のお顔にすごく親しみが沸いてくる。古代人は実に仏像のお顔を上手く彫りこんでいる。きっと古代人は現代人より、素晴らしい生き方をしていたのではないだろうか?僕は仏の顔をじっと見詰めていると、すごく自分の人生について教えられるような気がしてくる。僕は奈良散歩が大好きです。
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