「冬の五箇山、囲炉裏を囲んでゆっくり酒を楽しみたいね」。東洋紡同期入社前田君との約束は、3月初旬実現出来た。
(世界遺産 富山県 五箇山(ごかやま)合掌造集落)
高岡駅で車で待っていてくれた。早速民芸運動の開祖柳宗悦・棟方志功ゆかりの寺、光徳寺、善徳寺を訪ねるべく 冬の砺波平野を走る。車窓から砺波平野 散居村の広がりを見るのは何年振りだろう。底冷えする広大な寺内を住職に案内され、北陸人特有のしっとりとした、情緒細やかな人情味に、さすが北陸は落ち着くなあと実感。
五箇山は雪の中にあった。茅葺の合掌造、玄関先に設けられた大きな堀穴は加賀藩秘命の火薬製造の跡。草と土を混合し、煮詰めて硝酸を取り出した労働の日々が目の前にある。
夜は囲炉裏を囲んで、獅子鍋を楽しんだ。警視庁に合格し東京からひとり旅の女子大生、ワゴン車で全国行脚を続けている群馬の中年男性、囲炉裏を囲んで4人で飲む「どぶ酒」は少々酸味もきいて口当たりは絶妙。しかし何といっても地酒「三笑楽」は、「越の寒中梅」にも似てさっぱりしていて実に飲みやすい。とうとう2人で12本の徳利を空にした。「この酒は実に上手い。帰りは是非買って帰りたいね」。深い谷間の寒村にみぞれは静かに降り続く。