定年後の読書ノートより
バングラデシュを撮る、橋本 龍 著、岩波ブックレット
バングラデシュは矛盾と問題に満ちた国、肥沃な国土を持ちながら、貧富の格差と世界有数の最貧国の地位に甘んじている。理想をいだいて独立したはずなのに、国内では軍が政治力を持ち、人権抑圧が続いている。アジアの持つさまざまな問題点の縮図。

ヒンドゥ教とイスラム教の対立を温存させた英国植民地政策。弱者東パキスタンとして、強者西パキスタンからの搾取を受けてきた1947年〜1972年間。1972年3月26日バングラデシュ共和国建国。自立性の低い経済構造。高い人口密度。サイクロンによって起きる大洪水。飢餓。軍と官僚による政治取引き。国家予算の大半は、日本を主とする経済援助によって成立する国。

BNL(バングラデシュ民族主義者党)とAL(アワミ連盟)の政権争奪。群衆の暴動化。権力の都市集中。地方農民の不在。底辺を構成する無数の極貧層。抑圧される少数民族。チッタゴン丘陵地区での先住民を中心とする民族解放戦線ゲリラ戦線。チッタゴン丘陵地区になだれ込んでくるベンガル人入植者。追いつめられる先住少数民族。

サイクロン通過後、海水は国土の大半を洪水の渦中にする。至る所の田園は、海水に犯され、子供を抱く母親の水死体が無数に横たわり、腐敗していく。世界中から集まってくる救援物資も、焼け石に水。

バングラデシュはこれからどうなるのか。国家の経済援助に依存する体質を転換させるのは容易ではない。援助行政も地方分権が必要なのに、事実はますます中央集中。少数民族の解放戦線を敵に回している日本の政府援助は果たして、正しい「経済援助」足りうるか。複雑な諸問題を含み、日本の対バングラデシュ開発援助累計額は30憶ドルを突破している。

JAICAを通じたバングラデシュ繊維工業技術指導の機会は目下、日本政府の態度保留で中断し、小生のバングラ行きも中断している。しかし、この国の救いようがないこの苦しみに面して、国際社会の救いの手の有効な活用が望まれてならない。

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