定年後の読書ノートより

世界史のなかの明治維新、芝原拓自著、岩波新書
明治維新は日本人みずからの力で実現した数少ない歴史的大変革であるが、この変革のプロセスを促進したのは日本をめぐる国際情勢であった。これをリアルに描こうとしたのが本書である。

欧米列強の軍事的脅威の前に、日本の開国は強引に進められた。アロー号事件を機に英仏軍大艦隊は、中国をたたきのめした勢いにのって、日本に襲来するという情報はハリスから幕府に入った。当時のイギリスは、黒海、地中海へのロシア南下をおさえ、セイロンではセポイの反乱後、インド鎮圧。こうした帝国主義拡張を続ける英仏軍は中国を攻め、天津条約を結ばせ、次は日本だと息巻いていた。

イギリス外相クランドンは、中国遠征エルギン伯爵に、中国国交と同一原則を日本国交にも貫けと訓令していた。ハリスからこの報を知った幕府閣僚は戦慄した。

英軍1万余、仏軍6千の大軍、列強の前に敗れた中国はそれぞれ800万両の償金をとられ、屈辱的開港を強いられた。フランスはその足でベトナムを占領した。長州藩攘夷の放火は、藩の徹底的な軍事施設破壊で彼我の力の差を認識させられた。イギリスはこの猛威を背景に幕府にせまり、。欧米列強の軍事的威圧示し我々を威嚇した。

その後、屈辱的な外交経過で、日本からの輸出は、生糸、茶、農林水産物等原材輸出であり、イギリスからは綿糸、織物、砂糖等産業革命工業製品の輸入が続き、しかも金銀比率が、欧米では1対15、日本では1対5、この格差を利用して欧米商人は日本の金を買えば3倍の利益があがり、大量の金が日本から流出した。

イギリスを先頭とした資本主義世界体制に日本は従属的境遇を与えられつつ、不可避的に組み込まれていった。その歴史をこの本は極めてリアルに描こうとしている。

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