定年後の読書ノートより
ソウルと平壌、萩原 遼 著、文春文庫
著者は、随分正直な人だ。自分をよく語る。1937年高知生まれ。貧困の為、夜間高校。大阪外大朝鮮語科卒、赤旗記者として平壌に1972年から1年間駐在。その間朝鮮民主主義人民共和国の正体を自分の目で確認。最近は文春から多くの本を出版し、きっぱりと北朝鮮の正体を暴露し、人々の注目を集めている。文春の過去を知ってのことだろうが、本人は今も党員。

曰く。

北を訪れるまでの私の目もまた善意のウロコで曇っていた。しかし実際の体験と見聞によって百八十度違う社会であることがわかった。国全体が巨大な虚偽に包まれた社会であった。そして金日成は、偉大な指導者どころか、稀代の詐欺師であった

またこういう1節もある。
一般に北は社会主義国と思われている。だから北朝鮮は南の民主化を無条件に喜んでいると思われている。ところが北朝鮮は喜ばない。むしろ困りきっている。大統領選挙そのものも3日もたってようやく報道した。報道はしたが、金大中の名前を人民に伝えることが出来ない。なぜか。北朝鮮は軍事政権の方がよいのだ。軍事政権であればこそ金正日政権は存続できるのだ。

そして、こうも書いている。
金大中政権が北のテレビを南の国民に見せることにしたのもよいことだ。北の党機関紙をはじめ出版物をどんどん公開させればよい。そのばかばかしさに南の国民もすぐに気がつくだろう。また北に幻想をもち、あこがれの国と錯覚しているチュサバの学生などはどんどん北に移住させれば良い。北の恐るべき実態を知るだろう。
かっての私のように。

このかっての私のようにという一句はこの本の中で一番光っているところ。この文章は、外でもない。かって選ばれて平壌で長く赤旗の記者をやっていた人の発言だから簡単ではない。この人、本当に正直な人だと思う。こういう本を1冊読めば、もう隠された北の正体は我々の前に赤裸々になってしまう。

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