定年後の読書ノートより
朝鮮と私 旅のノート、萩原 遼著、文春文庫
1937年生まれ。大阪外大朝鮮語科卒、69−88年「赤旗」記者。現在フリーランス。

本書前半、ワシントン国立公文書館で平壌占領当時米軍が奪取した北朝鮮極秘文書より、1950年6月25日38度線を超えたのは、北側からであったことを、第657軍こと朝鮮人民軍第6師団の極秘指令書より確認、さらに当時、この軍にいた兵士からの軍の行動は極秘文書通りであったことをあらためて実証。あの朝鮮戦争が人民解放戦争でも、正義の戦争でもなかったことを歴史的極秘文書を丹念に調査していくことによって実証していったのは萩原氏の地味な努力の結晶でもある。

本書後半は、1945年10月14日、キム・ソンジュなる人物が突然抗日戦線伝説の英雄金日成として登場してきた裏話を当時のロシア関係者より聞き出す。キム・ソンジュなる人物は決して抗日パルチザンの英雄なんかではなく、無名のロシア軍所属の北朝鮮将校に過ぎなかった。アメリカ子飼いの李承晩が南朝鮮に迎えいれられたのを知ってソ連諜報機関は、それに替わる、ソ連側の子飼いを登場させた、それが金日成だったと歴史の真相を明らかにする。

著者萩原氏は、北朝鮮に帰国した在日朝鮮人のその後をテーマにした「北朝鮮に消えた友と私の物語」を書いている。これは第30回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した。しかし、萩原氏は、この本の中で、在日朝鮮総連議長を金日成と共に激しく糾弾した為か、最近日本共産党から、厳しい目で見つめられている。氏が何故離党しないのか、周囲の人々は彼にしつこく尋ねる。彼は今も党員のままである。

この本を読んで感じること。南北朝鮮の政治舞台の裏には、我々が知らない幾つかの隠された歴史的政治真実がある。北が正義で、南は米国の手先としてかっての単純な思考では現代史は掴めない。しかしまた、今の日本共産党はこうした複雑な政治的背景を党の権威で隠蔽したり、開き直ったりしようとはしていないことも理解出来る。ソ連の党のあの陰惨な歴史を知るものにとっては。想像出来ないほど、開けた今日の日本共産党のふところの広さである。

ここをクリックすると読書目次に戻ります