定年後の読書ノートより

明治維新と現代、遠山茂樹著、岩波新書
維新史の研究は、戦前タブーには触れまいとする研究者の自己規制から、前近代史に比較して、科学性が一段と低かった。唯物史観史学は、天皇制と日本資本主義との根本的批判の視点から明治維新史を大きく捉えてきた。先駆的業績として、野呂榮太郎の「日本資本主義発達史」及びコミンテルン27年・32年テーゼをめぐる革命戦略方針論争の意義は大きい。しかしこの論争も、言論抑圧の厳しい帝国主義論を故意にさけた論争であった。明治維新とは、帝国主義時代における国家権力の階級的性格を明らかにしてこそ、その本質に迫ることが出来る。

日本帝国主義の位置づけが、本書[明治維新と現代]の主眼とするところである。

遠山茂樹先生曰く。

「日本がアジアの中で唯一帝国主義となったのは、第1には資本主義を樹立する経済的、政治的条件をそなえていたこと、第2に欧米列強が帝国主義支配を東アジアで実現するためには、極東の代理人を必要としたこと、

すなわちアジア人をしてアジア分割の先頭に立たせる必要があったこと、そしてこの要求をつかみ利用することで、日本は20世紀初頭、英、米への従属的性格をもったまま帝国主義となったのである。

半植民地化した中国および植民地化した朝鮮では、近代化の力が帝国主義によっておしつぶされ、停滞せしめられた。これにたいし、帝国主義国の陣営に加わった日本は、民主化の側面はおさえられ、封建制と軍国主義の側面が強化されるという屈曲をうけながら、近代化の力は早熟的に帝国主義化する方向に集中せしめられた。

こうして20世紀に入ると、日本は中国・朝鮮そしてアジア諸国とは、敵対的な立場に立つ事になった。」

本書は、日本帝国主義形成史の粗描までであり、さらなる検討は、他の学術書を学ばねばならない。ここではひとつの問題提起として、受け取った。

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