定年後の読書ノートより
日本文化の歴史、尾藤正英著、岩波新書
この本で一番興味を持ったのは9ページの地域別文明発展の様相という図面。これは佐原真氏(現国立歴史民俗博物館館長)がドイツ民主共和国科学アカデミー「世界史―封建主義形成まで」の年表を改変されたもので、横軸に、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、アメリカ、日本等、地域別に10等分されており、縦軸は対数目盛りの年号で10000年まえから1000年単位で現代になっている。ここに3つの色分けで、食料採取段階、農耕社会の成立、王権の成立(国家形成)の大きな歴史の流れに地域別にどんな特色があるかを一目で判るように図面化されている。すなわちこの図より、日本は他地域に比較し、食料採取段階が3000年以上遅かったが、農耕社会は早々と通りこし、意外に早く国家成立に入っていることが歴然と理解出来る。

著者は、この図表を根拠に日本は国家成立が世界史との比較で意外に早く進んだのは何故かと問い掛けている。ここが面白い。実はこの表の面白さは、悪評高き、右傾化の歴史教科書、西尾幹二氏の「国民の歴史」にも、無断掲載されているそうで、西尾氏が「国民の歴史」の中でどんな歴史論をこの表から展開しているのか、いつか覗いてみたいと思っている。

著者尾藤氏は、この問題視点を、日本人はしばしば、単一民族であるといわれ、そのように見えることに対する批判の議論もあるが、混血の結果(南アジア系モンゴロイドの縄文人と北アジア系モンゴロイドの弥生人との混血)として、人種的な対立が解消している点からすれば、源流はとにかく、現実には単一の民族を形成していると言えないことはない。このように、単一性に近い民族構成をなしていることが、統一国家の形成には有利であったし、その後の文化の発展にも特色をおびさせたであろうと考えられる。と書いておられる。

最近、日本の歴史教育は藤岡信勝氏の「歴史教育・平和教育」論批判で大きくクローズアップされている。焦点は必ずや民族論もそのひとつになろうし、何故日本の国歌形成は短期成立が可能であったか、議論は加熱してくるに違いない。

ここをクリックすると読書目次に戻ります