定年後の読書ノートより
盗まれたフェルメール、朽木ゆり子著、新潮選書
フェルメールは生涯、50作品程度描いて、今日残っている作品は、32点。この32点が世界各国美術館に飾られている。そして、この希少な作品が故に、なんと多くの盗難事件にあうことか。本書のテーマは、フェルメールが始めてアメリカ美術館に飾られた「合奏」が、1990年3月18日、ボストンのガードナー美術館から盗まれ、未だ発見されていない盗難事件を詳細に追っている。

ガードナー美術館がどうしてアメリカで始めてフェルメールを飾ることになったのか、話はガードナー夫人の生涯から始る。恵まれた多彩な財閥夫人、夫人には子供がいなかった。集めた美術品を後世多くの人が見てくれることを望んで、極めて詳細な遺言書を遺してこの世を去った。

しかし、美術館の台所は火の車、作品には保険が掛けてなかった。400億円に及ぶ盗難の舞台裏は極めてお粗末。警備員は経験2週間のアルバイト学生。警察官に扮した犯人に容易に扉を開けている。

盗難の目的の多くは、保険会社との裏取引きで解決するそうで、本件はそうした意味でも保険を掛けていなかったとは、犯人も知らなかったろうと言われている。

世界的名画13点、今は地下覆面コレクターの美術館で密かに愛玩されているのではないか。ニューヨークではそう信じられている。覆面コレクターとは誰か。それは日本人だと事情通は言う。ここがこの本のもうひとつのミステリー。

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